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いずれも大量に持ち込まれた家畜や乾燥地帯での過剰な農耕によって、人間が拡大したものだ。
サハラ砂漠やゴビ砂漠でさえ、昔は緑なす森林だったが、気候の変化に加えて、人間と家畜の絶え間ない圧力によって砂漠が押し広げられてきた。
熱帯林の消えていく最大の原因は焼き畑だ。
土地の無い農民や都市のスラムをあふれ出た貧しい人々が、熱帯林に入り込んで収奪的な農耕や放牧でその日の生計を立てている。
世界で約二億ヘクタールの森林が焼き畑に利用され、約三億人が焼き畑だけで生活しているともいう。
樹木を伐り倒して焼いたあとに米、マメ、バナナ、イモなどをつくり、あるいは放牧地にする。
一、二年ぐらいは育つが、三年目ともなると養分は枯渇し害虫や雑草のために耕作や放牧は続けられなくなって、また別の森林に火を付ける。
人口が希薄なときには、一度火を入れても自然が回復する余裕があった。
しかし人ロの圧力が高まるにつれ、十分な休耕期間を置かないで焼き畑を繰り返す結果、貧弱な土地はますますやせ衰えていく。
焼き畑農業は熱帯林破壊の最大の元凶で、地域によって破壊原因の三五~七〇%を占める。
たとえば、西アフリカでは毎日約二〇〇〇ヘクタールの森林が焼き払われている。
アマゾンでは、破壊される熱帯林の三分の二は焼き畑が原因だ。
熱帯林の破壊の第二の原因は、木材の伐採である。
熱帯材の本格利用が始まって、まだ二〇余年しかたっていない。
しかし先進国が国内材の温存のために、欧州はアフリカに、米国は中南米に、そして日本は東南アジアへと木材資源を求めて進出した。
この進出を形容する三つのコネクションがある。
「ハシーコネクション」「ハンバーガー・コネクション」「そしてコフィン(棺桶)コネクション」である。
日本は、一部にせよ、割り箸を東南アジアの熱帯材から作り、米国はハンバーガー用の安い牛肉を生産する牧場をつくるために中南米の熱帯林を焼き払った。
そして、欧州は高級棺桶材を西アフリカから伐り出した。
いずれも愚かしい資源の浪費の象徴として、欧米の環境保護団体が槍玉に挙げている。
この二〇年で先進国の熱帯材輸入は一六倍になり、いまや世界の木材・パルプの供給量の一○%を占めるまでになった。
一九八五年現在で、この輸入の約半分は日本、欧州が三割、米国が二割ほどだ。
その一方で、四分の三の人口を占める発展途上国は、森林資源の半分以上を持ちながら、木材、合板、紙などの製品の消費量は、わずか一四%に過ぎない。
日本人一人が年間に紙として利用する木材の量は、発展途上国の住民が燃料として使うのと同じぐらいだという計算もある。
とくに、アジアの熱帯林から伐り出される木材の六割以上は日本向けである。
世界的に熱帯林保護の日本の責任を問う声が大きくなっているのも、世界最大の木材輸入国という点以外に、日本の開発のやり方に問題がある。
一九六〇年代から急増してきた南洋材の輸入は、七三年に二六〇〇万立方メートルというピークに達した。
ラワン材がベニヤ板に加工されて学校の机にも工事現場のセメント枠にもあふれかえった時代だった。
だが、日本は、木材という本来は再生可能な資源を、再生不可能なまでに破壊した略奪的ともいえる大量輸入を行った。
輸入相手国をみると、一九七〇年まではフィリピン、七一年から七五年までがインドネシア、その後はマレーシアで、八六年現在、熱帯材の八七%をマレーシア、しかもサバ、サラワク両州から輸入している。
いずれも、一国の森林資源を食い潰しては他の国に移るというやり方だった。
そのマレーシアにしても、一九九〇年早々にはめぼしい森林資源はなくなるとさえいわれている。
同国からの木材輸入量が、最盛時の半分以下になってしまったのも、何よりも資源の枯渇を証明している。
そして、先進国が熱帯林を焼き払って牧場にするのにも、非難が集まっている。
「ハンバーガー・コネクション」に限らず、先進国が国内で高くなり過ぎた肉のコストを引き下げるために、熱帯地方に進出するのは最近の流行である。
一九七五年にはこんな〈事件〉もあった。
米国の人工衛星の赤外線センサーが、アマゾンの上空で異常な高熱地域をキャッチした。
通常なら火山活動を意味する。
米国政府からの連絡でブラジル政府が調査団を送り込んだところ、西独の多国籍企業が牛の放牧場をつくるために、何と四〇万ヘクタール、つまり東京都の二倍ほどの森林を一度に焼いていた現場だった。
アフリカのボツワナでも、先進国の企業に支援され大規模の牧場造成で、深刻な砂漠化に悩まされている。
このほか、ブラジル、マレーシア、ペルーなどでは、熱帯林の真っただ中に金、鉄、銅などの鉱床が発見され、その採掘も森林に大きな傷を残しつつある。
私たちにとっては、森林の喪失が毎日の生活をいかに変え、いかに住民を苦しめているかを理解するのは難しい。
しかし多くの国では、その緑破壊の最終的なツケが、エネルギー危機となって現れている。
といっても、先進国の石油危機ではなく薪の不足である。
八〇年のFAOの調査によると、世界人口の半数がエネルギーを薪や炭に頼っている。
世界で伐採される木材の半分強は、燃料に回されている。
ところが、集落の周辺の木を伐り尽くして遠くまで薪集めに出かけねばならず、ネパール、インド、アフガユスタンなどのアジア諸国や、マリ、ニジェールなどのアフリカの乾燥地帯では、薪集めは普通、週三回、それも一回が七、八時間、ときには途中で野宿しなくてはならない重労働だ。
同じ調査によると、世界で約一一億四九〇〇万人が薪炭の不足に悩まされている。
西暦二〇〇〇年にこれが二四億人にも増加すると予測している(図一3)。
薪が手にはいらなくなった人々は、家畜のフンを乾燥させて燃料に使う。
本来は有機肥料として畑に還元すべきフンを燃やすことで、田畑の疲弊はいよいよ進行する。
そのフンさえ人手できない人々は、世界で九〇〇〇万人以上いると、FAOは推定する。
燃料が高騰して貧しい層には手が届かなくなっており、もはや火を通した料理を食べるのがぜいたくにさえなりつつある地域がじわじわ広がっている。
エチオピアでは、国道の舗装をはがして燃料にしたり、スーダンでは電信柱を倒して薪にしているのを目撃したことさえある。
森林の消失が急ピッチで進む中国では、棺桶の自粛が国民運動の一つに取り上げられている。
一〇億人を超える世界一の人口大国中国では、毎年死ぬ人も六〇〇万人を数える。
この半数が土葬されても、棺桶だけで一〇〇万立方メートルの木材が必要になるという。
すでに森林面積は国土の一一%を割り、これ以上非生産的な棺桶に貴重な木材を回すことはできなくなりつつある。
ネパールやインドの一部では、薪不足で伝統的な火葬も思うにまかせず、形式的に遺体の一部を焦がしただけで埋葬するのも増えてきた。
木の不足はここまできているのだ。
森林の大規模な破壊が今後人類にどんな影響を及ぼすかは、これからの問題だ。
まず第一に考えられるのは、気象への影響だ。
このところ大気中の二酸化炭素濃度の増加が地球の平均気温を押し上げ、両極の氷が溶け出して海水面が上昇して大災害につながる、とする予測や警告が各国で発表されている。
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